宝厳院ってどんなところ?歴史や見どころ・アクセスについて徹底解説

嵐山の景勝地に佇む宝厳院は、天龍寺の塔頭寺院として500年以上の歴史を持ちながら、春と秋の特別公開期間にのみその姿を現す神秘的な存在です。
「獅子吼の庭」と呼ばれる回遊式庭園は、嵐山の自然美を借景として取り入れ、訪れる人々を時空を超えた瞑想の世界へと誘います。
苔に覆われた獅子岩、鮮やかな紅葉、清々しい青もみじ—四季折々の表情を見せるこの庭園は、まさに京都が育んできた美の結晶といえるでしょう。
本記事ではそんな宝厳院について詳しく解説していきます。
宝厳院ってどんなところ?

宝厳院は、京都嵐山に位置する臨済宗天龍寺派の塔頭寺院です。
1461年に創建され、その後幾度かの移転を経て、2002年に現在の場所に再興されました。
特徴的なのは、通常非公開で春と秋の特別公開期間にしか訪れることができない点です。
見どころは「獅子吼の庭」と呼ばれる借景回遊式庭園で、嵐山の景観を巧みに取り入れています。
庭内には獅子の形に見える「獅子岩」があり、禅の教えを象徴する石組みが配されているのです。
本堂には田村能里子画伯の襖絵「風河燦燦三三自在」が展示されており、苔と紅葉の美しさも訪問者を魅了しています。
特に秋の紅葉シーズンにはライトアップも行われ、幻想的な景色を楽しむことができます。
宝厳院の歴史
宝厳院は500年以上の歴史を持つ京都嵐山の寺院です。
創建からいくつもの変遷を経て現在の姿に至っていますが、その歴史は京都の盛衰とも重なります。
応仁の乱による焼失や幕末の戦火など、幾多の困難を乗り越えて再興を繰り返してきた歴史は、日本の寺院が持つ強い生命力を象徴しているのです。
それでは、宝厳院の歴史を三つの時代に分けてご紹介しましょう。
室町時代の創建と初期の試練
宝厳院の創建は、室町時代の寛正2年(1461年)に遡ります。
天龍寺の開山・夢窓疎石の法孫にあたる聖仲永光禅師を開山として迎え、室町幕府の管領であった細川頼之の財政支援により創建されたと伝えられています。
ただし、細川頼之は創建の69年前に没しているため、彼の遺志や遺産に基づいて子孫や関係者が建立に関わった可能性があるでしょう。
創建当初の宝厳院は現在の嵐山ではなく、京都市上京区の禅昌院町に位置していました。
しかし、創建からわずか6年後の1467年に始まった応仁の乱の戦火により焼失してしまいます。
この時代、多くの寺院や文化財が失われる中、宝厳院もその例外ではなかったのです。
桃山・江戸時代の再興と発展
応仁の乱による焼失から約100年後、安土桃山時代の天正年間(1573年〜1591年)に宝厳院は再興されました。
この時期は豊臣秀吉の援助があったとされ、寺領として32石の米収穫高に相当する土地が寄進されています。
寺の再建には、当時の権力者の庇護が不可欠だったのです。
江戸時代に入ると、徳川幕府からも外護を受け、宝厳院は安定した発展を遂げました。
この時期に獅子吼の庭の前身となる庭園も整備されたと考えられます。
江戸時代後期に出版された『都林泉名勝図会』には、現在の宝厳院がある場所にあった妙智院の庭園が掲載されており、当時から名園として評価されていたことがわかります。
宝厳院は転換期を乗り越え、京都の文化的景観の一部として定着していったのです。
明治以降の移転と現代の再興
明治時代に入ると、宝厳院はさらなる変遷を経験します。
河川工事のために寺域が買い上げられたという記録もあり、昭和47年(1972年)には、同じく天龍寺の塔頭である弘源寺の境内に移転しました。
そして大きな転機となったのが、平成14年(2002年)1月の現在地への移転です。
この移転先は、かつて天龍寺の塔頭であった妙智院の旧跡地でした。この移転により、宝厳院は妙智院の地が持つ歴史的意義と名高い庭園を受け継ぐことになったのです。
現在の宝厳院を特徴づける「獅子吼の庭」は、室町時代に策彦周良禅師が妙智院のために作庭したものを基盤に、明治時代の鈍穴流による改修を経て、現代に甦った重層的な歴史を持つ庭園といえるでしょう。
宝厳院の見どころ
春と秋の特別公開期間にのみその扉を開く宝厳院には、訪れる人々を魅了する数々の見どころがあります。
嵐山の自然美と一体化した庭園、静寂の中で語りかける石の配置、そして現代の感性で描かれた襖絵など、古きと新しきが絶妙に調和した空間が広がっているのです。
その美しさは季節によって表情を変え、何度訪れても新たな発見があります。
それでは、宝厳院の主な見どころを三つご紹介しましょう。
獅子吼の庭(ししくのにわ)

宝厳院の最大の見どころは、約12,000平方メートルに及ぶ借景回遊式庭園「獅子吼の庭」です。
「獅子吼」とは「仏が説法する」という意味を持ち、庭園内を散策しながら自然の音に耳を傾けることで、無言の説法に触れることができます。
嵐山の景観を巧みに借景として取り入れたこの庭園は、室町時代に策彦周良禅師によって作庭されたと伝えられています。
園内には「獅子岩」と呼ばれる特徴的な巨岩があり、ある角度から見ると獅子が吠えているように見えることからその名が付けられました。
他にも「苦海」「三尊石」「舟石」など、禅の教えを象徴する石組みが配置され、仏教の世界観を表現しているのです。
特に春の青もみじと秋の紅葉の季節には、苔と樹木が織りなす色彩の調和が見事ですよ。
田村能里子画伯による本堂襖絵

特別公開時に必見なのが、現代日本画家・田村能里子氏が手掛けた本堂の襖絵「風河燦燦三三自在(ふうがさんさんさんさんじざい)」です。
2008年に完成したこの作品は、全58面にも及ぶ大作で、伝統的な寺院襖絵としては異例の鮮やかな朱色を基調としています。
描かれているのは観音菩薩の化身として現世に現れた33人の様々な姿形の人々であり、仏教の世界観を力強く表現しています。
注目すべきは、女性画家が寺院本堂の主要な襖絵を手掛けたのは田村氏が初めてという点で、日本の現代宗教美術における画期的な作品となっているのです。
襖絵を観覧するには、庭園の拝観料とは別に本堂参拝の志納料が必要ですが、現代アートと伝統空間の融合という稀有な体験ができるでしょう。
季節の移ろいを映す紅葉と青もみじ
宝厳院の魅力は季節によって大きく変化します。
春(3月中旬~6月下旬頃)の特別公開時には、「青もみじ」と呼ばれる新緑が庭園を鮮やかに彩ります。
この「青もみじ」という言葉は宝厳院から広まったともいわれ、初夏の京都の風物詩となっています。
一方、秋(10月上旬~12月上旬頃)の特別公開では、約3,000本のモミジが赤や黄色に色づき、獅子吼の庭は燃えるような色彩に包まれます。
特に11月中旬から12月上旬には夜間特別拝観も実施され、ライトアップされた紅葉が幻想的な雰囲気を醸し出すのです。
このように、宝厳院は春の爽やかな緑と秋の情熱的な紅の両方の表情を持ち、訪れる時期によって全く異なる庭園美を堪能することができます。
宝厳院のおすすめ観光シーズンは?
宝厳院は春と秋の特別公開期間にしか訪れることができません。
春のおすすめは3月中旬から6月下旬で、「青もみじ」と呼ばれる新緑が美しい庭園を彩ります。
この時期は紅葉シーズンに比べて比較的混雑が少なく、落ち着いた雰囲気の中で庭園の美しさを堪能できるでしょう。
秋のおすすめは10月上旬から12月上旬で、約3,000本のモミジが赤や黄色に色づく様子は圧巻です。
特に11月中旬から12月上旬にかけては見頃を迎え、夜間にはライトアップも実施されます。
ただし、紅葉のピーク時は非常に混雑するので、平日や開門直後、夕方近くの時間帯を選ぶと良いですよ。
どちらの季節も、獅子吼の庭の表情が全く異なる魅力を見せてくれます。
宝厳院のアクセス
宝厳院は京都の嵐山地区、天龍寺の敷地内に位置しており、様々な交通手段でアクセスすることができます。
京都観光の中心である京都駅からも、金閣寺などの他の観光名所からも比較的アクセスしやすい立地です。
それぞれの出発地点からのアクセス方法をご紹介します。
京都駅からのアクセス
京都駅から宝厳院へは、バスと電車の2つの主要なアクセス方法があります。
バスを利用する場合は、京都駅前バスターミナルから京都市バス28番に乗車し、「嵐山天龍寺前駅」で下車します。
そこから徒歩で約5分です。
また、京都バス72番または73番に乗車して「京福嵐山駅前」で下車し、徒歩5分という方法もあります。
電車を利用する場合は、JR嵯峨野線(山陰本線)に乗車し、「嵯峨嵐山駅」で下車、そこから徒歩で約10〜15分です。
紅葉のシーズンは特に混雑するため、時間に余裕を持って訪れることをおすすめします。
金閣寺からのアクセス
金閣寺から宝厳院へは、市バスを利用するのが便利です。
金閣寺前から市バス59番に乗車し、「嵐電北野白梅町」で下車します。
そこから嵐電(京福電車)北野線に乗り換えて「嵐山駅」まで行き、駅から徒歩約5分で宝厳院に到着します。
また、金閣寺前から市バス59番で四条大宮まで行き、そこから阪急電車嵐山線に乗り換えて「嵐山駅」で下車、徒歩約10分という方法もあります。
タクシーを利用する場合は、金閣寺から宝厳院まで約20分程度で、混雑状況によって変動します。
観光シーズンは交通機関が混み合うことがありますので、時間に余裕を持った計画をおすすめします。
宝厳院の拝観料・拝観時間
以下の表は宝厳院の基本情報をまとめたものです。
項目 | 内容 |
---|---|
所在地 | 京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町36 |
拝観時間 | 9:00~17:00(受付終了 16:45) ※本堂襖絵は受付16:30終了の場合あり ※秋の夜間特別拝観:17:30~20:30(受付終了 20:00) |
拝観料 | ■ 庭園:大人700円、小中学生300円 ■ 本堂特別公開:別途 大人500円、小中学生300円 ■ 宝厳院・弘源寺割引共通券:1,000円 ■ 秋季夜間特別拝観:大人1,000円、小中学生300円 |
駐車場 | なし(最寄りの天龍寺駐車場を利用) |
最寄りバス停 | ・市バス28番など:「嵐山天龍寺前」下車 徒歩約5分 ・京都バス72・73番など:「京福嵐山駅前」下車 徒歩約5分 |
最寄り駅 | ・JR嵯峨野線「嵯峨嵐山駅」下車 徒歩約15分 ・京福電鉄嵐山線「嵐山駅」下車 徒歩約3分 ・阪急嵐山線「嵐山駅」下車 徒歩約10分 |
特記事項 | ・春季(3月中旬~6月下旬)と秋季(10月上旬~12月上旬)の特別公開期間のみ拝観可能 ・本堂襖絵は法要等により拝観できない場合あり ・秋季は昼夜入替制(通し拝観不可) ・拝観料や公開期間は変更される可能性があるため、公式サイトで要確認 |
宝厳院のおすすめ周辺スポット
宝厳院の周辺には、歴史と風格ある寺院が点在しています。
嵐山散策の際には、ぜひ足を延ばしてみてください。
天龍寺

宝厳院の母体寺院であり、隣接する臨済宗の大本山です。
足利尊氏が後醍醐天皇の菩提を弔うために創建し、夢窓疎石が開山しました。
世界文化遺産「古都京都の文化財」の一つに登録されており 、特に夢窓疎石が作庭した曹源池庭園は、嵐山や亀山を借景とした壮大なもので、国の史跡・特別名勝として四季折々の美しさを見せます。
法堂の天井に描かれた迫力ある雲龍図も見逃せません。
弘源寺

宝厳院と同じく天龍寺の塔頭寺院で、隣接しています。
宝厳院と同様に春と秋に特別公開されることが多く、割引共通拝観券も利用できます。
見どころは、嵐山を借景とした枯山水庭園「虎嘯(こしょう)の庭」や、近代日本画の巨匠・竹内栖鳳とその一門(上村松園など)の日本画、そして幕末の禁門の変の際に長州藩士が付けたとされる柱の刀傷などです。
重要文化財に指定されている毘沙門天立像が公開されることもあります。
清凉寺

「嵯峨釈迦堂(さがしゃかどう)」の名で広く知られる浄土宗の古刹です。
『源氏物語』の主人公・光源氏のモデルとされる左大臣・源融(みなもとのとおる)の山荘跡に建てられた棲霞寺が前身と伝わります。
本尊の釈迦如来立像(国宝)は、インド、中国を経て日本に伝来した三国伝来の生身(しょうじん)の釈迦像として信仰を集め、胎内に絹製の五臓六腑模型を納めていることでも有名です。
広大な境内には、豊臣秀頼が再建した本堂や多宝塔、阿弥陀堂などが点在しています。
金閣寺周辺でのお食事は錦鶴へ

お食事処錦鶴は、京都金閣寺から徒歩3分のところにあり、四季折々の京野菜や湯葉、湯豆腐といった京都の特産品を使用した料理を提供しております。
特に、直径30cmの大きなお椀に盛り付けられた「金閣弁当」は当店の名物で、これまで多くの方に愛されてきました。
錦鶴は、修学旅行でご利用いただける弁当から、お祝いや法要などの特別な機会にも対応可能な豪華な御膳まで、幅広いメニューを取り揃えています。
京都の食文化を体験したい方、大切な人とのお食事の場として、また日常的な和食を楽しみたい方は、ぜひ錦鶴をご利用ください。
質の高い料理と心のこもったサービスで、お客様の食事時間と京都旅行の思い出を豊かにするお手伝いをさせていただ蹴ますと幸いです。
宝厳院についてよくある質問
宝厳院とはどのようなお寺ですか?
嵐山にある臨済宗大本山天龍寺の塔頭寺院(たっちゅうじいん)です。
室町時代の1461年に創建されたと伝わります 。通常は非公開ですが、嵐山を借景とした回遊式庭園「獅子吼の庭(ししくのにわ)」が特に有名で、春と秋の特別公開期間に拝観できます。
いつ拝観できますか?
通常は非公開となっており、春(例年3月中旬~6月下旬頃)と秋(例年10月上旬~12月上旬頃)に行われる特別公開の期間中のみ拝観が可能です。
公開期間は年によって変動することがあるため、訪問前には必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。
見どころは何ですか?
最大の見どころは、嵐山の自然を巧みに取り入れた回遊式庭園「獅子吼の庭」です。
庭園内には「獅子岩」などの苔むした巨岩が配され、四季折々の景観が楽しめます。
特に春の瑞々しい新緑(青もみじ)や秋の鮮やかな紅葉は格別の美しさです。
本堂の現代的な襖絵も見応えがあります。
拝観料はいくらですか?
庭園の拝観料は大人700円、小中学生300円です。
本堂内部の襖絵を拝観する場合は、別途、大人500円、小中学生300円の志納料が必要となります。
秋の夜間特別拝観(ライトアップ)は料金設定が異なります。
料金は変更される可能性があるため、公式サイトでの確認をおすすめします。
まとめ
宝厳院は、京都嵐山に位置する天龍寺の塔頭寺院です。
通常は非公開ですが、春と秋の特別公開期間には、嵐山を借景とした壮麗な回遊式庭園「獅子吼の庭」が公開されます。
この庭園は、苔や巨岩、そして四季折々の美しさ、特に春の新緑と秋の紅葉で知られています。
本堂の現代的な襖絵も見どころの一つです。
限られた期間のみ拝観できる希少性も、宝厳院の魅力となっています。
ぜひ京都を訪れた際は、ぜひ足を運んでみてください。